泥舟さん日記㉖『沈没船にはお宝がいっぱい』~ノンフィクション風ビジネス血風録~

泥舟さん日記です。

深く考えず、軽い気持ちでお読みください。

※文面は、サポーテストで再構成しております。あくまでもフィクションですので、ここに出てくる人物・会社・団体名は存在しません。「ノンフィクション風」ということでご理解いただければ。

「会社とはなんぞや?」と考え始めて数年間、様々な職種の方々に、その疑問に対する言葉を聞きかじりながらまとめております。
文章のみですので、それぞれで捉え方をしていただきたく、深く考えず軽い気持ちで想像力を働かしながらお読みください。

~「泥舟日記」より~

その26「開き直っている社員が一番強い」

1月のある日

始発電車に乗って4時間、海に面するのどかな田舎町にやってきた。

昨日、管理部長に内密で呼び出しにあい、一番遠い営業所への出張を命じられて
5人にも満たない小さな事務所にようやく到着した。

なぜ、営業所メンバーと全く接点のなかった自分に出張を命じたのか、その目的は何なのか、は何も聞かされずに疑問のままだが
どう考えても、この営業所の方たちが「普段何をしているのか?」や「ちゃんと仕事をしているのか?」「会社の悪口を言っていないか?」などの諜報活動をしろってことなんだろう。

『そりゃ、誰もこんなところに望んでくるヤツはまずいないし、おそらく何らかの理由で「島流し」をされた人たちが恨み節や悪口を言わないわけがないだろな…。
とか
それに、営業所の方達も何の関わりのない俺が来るということは、本社から探りを入れに来てるのか、俺が営業所に着任するか、いわゆる「島流しの同士」のどちらかと思っているだろう。               んっ………、俺がこの営業所に……左遷されるのか……
まあ、結構現経営陣に批判的な俺もホントにあり得なくもないし、業績が右肩下がりの会社の中枢でこれから予想される混乱に巻き込まれるよりも、ここでのんびりと過ごすのもいいか…』

 

キラキラ輝いている冬の海に沿っている通りを歩き、色んなパターンに思いを馳せながらの道のりであったが、営業所の扉を開けると、入った瞬間、ゆるいのか、生ぬるいのか、どんよりしているのか、表現は難しいが本社では感じたことのない「異空間の世界」だった。

ただ言えることは『意外と居心地がいい』。

最初は俺のことを訝しげに見ていた営業所の面々も、本社の業績が芳しくないことや○○さんが異動になったなどの「人の不幸話」で盛り上がり、打ち解けるのにさほど時間は要さなかった。

ここにいるみんなは「昔はバリバリだった」経歴の持ち主のようだ。あくまでも自己申告だが。

ただ「もし本社から戻ってくるように要請されたら?」と質問すると「もう少しここでやり残したことがあるので今は断る」。やり残したことがホントにあるのかどうかは知らないが。

「今の会社はどう思います?」と聞くと「ライバル会社は中途採用を活発にして新しいビジネスを探っている」とか「詳細は言えないが、今度業界の中で業務提携や合併があるから見とけよ」とか信憑性は別として、この方たちのほうが諜報活動しているじゃないかと思うほど本社にいれば決してわからない情報も教えてくれ「経営陣も早く方向性を決めないと、このままではヤバいぞ」と、この時だけはバリバリの頃の目をしていた…ように推測する。

今は暇を持て余しているようだが、おそらく、彼らは一時代を気づいた「本物」なんだろう。

何らかの理由で会社から疎まれて飛ばされたのだろうが、デキる人間だからこそ本質がわかってしまい、黙っていることができずに会社を案じてしまったのではないのか……彼らと会話をするにつれ、アップデートされているその情報網や見識の広さは、俺でも容易に理解ができた。

夕方
冬の風が強く吹きはじめ、いっそう潮の香りのする営業所を後にした。

滞在時間は数時間であったが、行く前とは違い、これまでのどの出張よりもなぜか充実した気分になった。

目に見える成果は全くもって、何もなかったが…。

出張報告書に何を書こうか。
「みんなバリバリ仕事をしてました」ってのもウソくさいし
「会社の悪口ではなく、会社の行く末に心を痛めているがうえの発言でした」というのも管理部長より上位の人たちを逆上させるかもしれないし…。

「やる気はあるようです。たぶん」とでも言っておこう。



今回のわかったこと                                         「実は遠くにいる人のほうが冷静な目で見ているものなんだろう。そして、のんびり過ごす会社生活ってのも意外とアリなのかもしれない」

2024年04月28日